
こんにちは。不動産相続アドバイザー鈴木です。
今回はちょっと趣向を変えてインタビュー形式でお届けします。不動産にまつわるお金の話として、遺産相続した土地に古い抵当権が設定されている場合の解決策について知り合いの弁護士さんにお話しを伺ってみました。
伊藤さんこんにちは。突然登場していただいてありがとございます。先ずは自己紹介お願いします。
こんにちは。栃木県宇都宮市所在の今泉法律事務所所属の弁護士です。伊藤幹哲(いとうまさのり)と申します。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。伊藤さんはどんな弁護士ですか?
そうですねぇ。弁護士ってちょっと敷居の高いイメージをお持ちの方も多いと思いますが、悩み事やトラブルに巻き込まれたとき気軽に相談していただけるような弁護士を目指してます。
クライアントの抱えている問題について具体的な対応策や解決策を、わかりやすく丁寧に説明するよう心がけています。
得意な分野はありますか?
うち(今泉法律事務所)は、幅広い法務サービスをご提供させていただいておりまして。そういう意味ではあらゆる分野に対応しているのですが、企業法務関連のご相談でご利用いただくことが多いですね。もちろん、不動産関連や事業承継、相続対策にも力を入れていますよ!
遺産相続した土地に古い抵当権が!
今回のはどんなテーマで進めましょうか?
以前、鈴木さんが不動産のお金に関する記事を書いておられましたが、とても興味深いお話ですね。
読んでいて私も不動産関連の融資やローンで思い出したことがあります。
どんなことですか?
土地に古い担保権が設定されている場合にどうしたらよいのかというお話です。休眠担保権といわれている問題ですね。
確かに不動産に放置された昔の抵当権がついてると処分が難しくなりますね。
例えば、最近両親がなくなり、遺産の土地を相続したAさんがいるとします。
Aさんもまた高齢であり、自分が亡くなったときに子供に負担を残したくないと考えているとします。
そこでAさんは相続税対策を兼ねて、土地にマンションを建てようと思いました。
相続した土地の利用方法としてはよくあるケースですよね。
ええ。ところがマンションを建てるために、銀行で融資・ローンの相談をしようと思い、土地の登記簿を開けてみたら、なんとびっくり!大正時代の抵当権が設定されているではないですか!!
抵当権を持っているのはBさんと書いてありますが、全然知らない人で多分はるか昔にお亡くなりになっている方で、しかも当時の借入額ですから、被担保債権はたったの80円となっています。
大正時代はけっこうな金額だったんでしょうね。
多分、今の千倍くらいじゃないかと。
抵当権があると銀行もお金貸してくれないですよね。
ですね。抵当権を抹消してから来てくださいと言われると思います。
古い抵当権のせいで土地が競売にかけられてしまったなんて話しも聞きますが、Aさんはどうしたらいいのでしょう。
昔の抵当権や古い抵当権の抹消方法は?
所在不明の調査
先ずはBさんがどういう方なのかを調べないといけませんね。
登記簿に記載のある住所に行ったりして「所在不明の調査」を行いますが、このとき『不動産登記法70条第3項』後段の「供託」ができるかがポイントになります。
不動産登記法第70条第3項
第一項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。
Bさんが行方不明(抵当権の登記の名義人の現在の所在も、死亡の有無も不明の場合)かどうかが重要です。
このケースではBさんは既に亡くなられていると。
そうです。ただ登記簿に記載のある住所にはBさんの孫であるCさんが住んでました。
登場人物が増えましたね。これも不動産相続ではよくあるパターンですね。
そうですね。Cさんは抵当権を抹消しても構わないと思っていますが、実はBさんにはたくさん親戚がいるようです。
一気に複雑になりました。他の相続人を探さなないと。
相続人の調査
少し時間がかかりますがBさんの相続人を調査することにしましょう。
もしBさんの相続人の人数が少なく、みんな近くに住んでいれば話し合いでどうにかなると思いますが、相続人がたくさんいたり遠くに住んでいる場合には、話し合い以外の別の手続を考えなければなりません。
仮にBさんには20人の相続人がいて、北は北海道から南は沖縄まで全国各地に住んでいるとしたらどうしましょう?
その場合は実際に全員に会いに行くことはちょっと難しいですね。
会いに行ったとしても協力してくれるかわからないですし、協力してくれるとしても大正時代の抵当権ですから、設定から約100年が経過しているので当時の登記済証がある可能性は少ないです。
協力者にもかなりの手続的負担を強いることになりますよね。
文書送付・訴訟
そこでこういう場合は、Aさんが単独で抹消登記手続できるよう、裁判所に訴訟を起こして登記を抹消することになります。
勝訴すればAさんが単独で手続できると。
でも訴訟をおこすとなると長い時間がかかったり争ったり、かなり大変というイメージがありますが?
そうですよね。でも今回は債権が消滅時効にかかっていることが証拠から明確ですので、まず間違いなく勝訴するでしょう。
したがって、Bさんの相続人の方々を驚かすことなく進めていくことがポイントになります。
なるほど。Bさんの相続人の方々に対してはどんな方法で対応すればよいのですか?
会いに行ける人がいるなら事前に会って話を通しておくとよいですね。そのうえで弁護士からBさんの相続人の方々に対し、事情を説明した文書を送るのがよいでしょう。
その文書の中で裁判に必ずしも出頭する必要がないこと等を説明し、費用もAさんが持つことを説明すれば安心していただけると思いますよ。
文書が届くと直接連絡してくる方もいるかもしれませんが、その場合は「大正時代の債権がたまたま消えずに残っている」こと、したがって「時効である」こと、そもそも「80円の債務である」ことなどを丁寧に説明をすることが大切です。
きちんと事情を分かりやすく説明する事が重要ですね。
登記の抹消・その後
判決が下りれば抵当権設定登記の抹消登記手続きができます。
Aさんは抵当権が抹消された土地の登記簿を持って銀行に行き、無事に融資を受けられるようになりました。
Aさんやその子供たちにとっても無事解決して何よりでしたね。
何らかの問題があって利用されていない土地を、利用できる土地に戻して活用していくことは土地の所有者にとって重要なことですね。
まとめ
今回のケースはひとつの典型例にすぎません。現実にはいろんな人がいますから難航を極めることも多いです。
例えばBが人間ではなく会社であるパターンや、Cさんに巡り会えないパターンなど、現実には数限りなく分岐点がありますね。
そうですね。とくに不動産相続は複雑でトラブルにもなりやすく、解決に時間がかかる場合も多いですからね。
不動産を持つことはメリットがある反面で、賃料未払等を典型例として常にリスクをはらんでいます。
今回のような休眠担保権の問題の場合はもちろんのこと、何らかの不都合により不動産を有効に活用できないケースに巡り会ってしまった場合には、お一人で解決するのはとても困難なので、不動産相続アドバイザーや弁護士に気軽に相談していただきたいですし、身近に相談できるブレーンを作っておくことが大切なのではないでしょうか。
伊藤さんのような頼れる弁護士に。
ありがとうございます(笑)。
お忙しい中休眠担保権の問題に関して分かりやすくお話しくださり、ありがとうございました。
伊藤幹哲(いとうまさのり)弁護士のご紹介
今泉法律事務所(栃木県宇都宮市)の伊藤弁護士は、不動産関連や相続対策を初め、さまざまな分野で豊富な知見をお持ちで、紛争やトラブルの解決だけでなく、ちょっとした相談でも丁寧でわかりやすくアドバイスしていただけるとても親しみやすい弁護士さんです。
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